第3回ワークショップの模様

2012年11月9日、東京駅八重洲口近くにあるTKP東京駅ビジネスセンター1号館で、第3回ワークショップ「オープンデータと行政・市民活動」を開催しました。

当日は、講師を含め20名以上の参加者にお集まりいただき、3人の講師によるプレゼンテーション、鼎談、そして参加者全員でのディスカッションが行われました。

写真:ワークショップの様子

まずはじめに、村上文洋氏(三菱総合研究所)から「公共データのオープン化は社会や企業にどのような影響をもたらすか」の講演をいただきました。

写真:村上氏の講演の様子

<講演の要旨>

村上 文洋 氏 (株式会社三菱総合研究所)
PDF村上氏の講演資料(2.8MB)

  • 東日本大震災は、オープンデータの可能性や必要性を実感する契機のひとつとなった。新しいスタイルで様々な情報が活用される一方で、情報の所在が一定せず分かりにくい等の課題も明らかになった。
  • EUではオープンデータに関するEU指令が出ており、その経済効果を1400億ユーロと試算。
  • アメリカでは大統領が「オープンガバメントに関する覚書」を発表し強力に推進。
  • 日本でも電子行政オープンデータ戦略が決定され、さらに産官学が連携する「オープンデータ流通推進コンソーシアム」が旗揚げ。
  • オープンデータ推進には様々な課題が階層的に存在しており、今後、技術開発や標準化だけでなく、著作権やライセンスの整備、オープンデータに関する社会的コンセンサス作りなどを進める必要がある。

続いて、横浜市政策局政策課政策支援センターの関口昌幸氏から「横浜市におけるオープンデータへの挑戦」の講演をいただきました。

写真:関口氏の講演の様子

<講演の要旨>

関口 昌幸 氏 (横浜市政策局政策課)
PDF関口氏の講演資料(109KB)

  • 横浜市は、オープンデータ推進により新しい形での都市再生を目指している。
  • 背景として、超高齢化社会が目前に迫り官民協働で地域課題への対応が必要になっていること、従来型の就労モデルが通用しなくなり、地域に新たな雇用を創出して活性化する必要が生じていることがある。
  • オープンデータによる地域産業振興には、民間と行政が新しい形で協働する戦略が必要になる。特に地域課題の解決には、地域の人々のニーズや意見を集約するしくみが必要。それらの情報を集め、ジョイントベンチャー等につなぐしくみが重要になる。
  • 横浜市ではオープンデータの推進は行政だけでなく民間と共同で進める。そのための体制づくりと様々なイベントを進めている。

続いて、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボの杉浦裕樹氏から「横浜の地域情報化の担い手たちの活動」の講演をいただきました。

写真:杉浦氏の講演の様子

<講演の要旨>

杉浦 裕樹 氏 (NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ)
PDF杉浦氏の講演資料(準備中)

  • 横浜で、多様なプレイヤーの活動の場づくりを進めている。
  • 地域には様々なコミュニティがあるが、相互のつながりが薄い。これらのつながりづくりが重要なテーマ。ICTを活用するが、基本は人と人とのつながりを作るということである。
  • 横浜が抱える課題をビジネスチャンスに変えるという視点で取り組んでいる。地元の企業やIT人材を集めたワークショップ、ウェブを活用した地域情報の共有、シェアオフィスの運営などを通じて、新しい連携を生み出し、都市のイノベーションを推進する。

後半は、3名の講師による鼎談の後、講師も含め参加者全員で、地域社会のオープンデータに関する活発な討論、意見交換が行われました。

<鼎談のポイント>

  • 大きなビジネスを生み出すビッグデータとは別に、コミュニティビジネスを生み出すオープンデータの効果には違う視点があるのではないか。
  • オープンデータは従来の電子会議室等の取組と異なり、産業活性化、雇用創出まで視野に入れ、広がりのある取り組みを進める点が特徴。
  • 地域のオープンデータは、情報流通の「場」を作ることが重要である。ソーシャルビジネスにはさまざまな担い手がおり、それらの人々の活動と行政を結びつける場作りが重要。GDPに出ない地域活性化効果につながる。
  • 地域課題の状況をわかりやすい形でオープンにすることが大事。よりきめ細かい情報の共有が、自分の地域を自分でマネジメントする形に結びつく。
  • 従来はボランティアベースだった地域活動を担える層が希薄化している。これをビジネスとして捕らえ、コミュニティサービスが金銭を通じて回っていくしくみづくりが重要。
  • 行政サイトは出す情報量が10年で大幅に増えたが、見る人は少ない。情報の小売業ではなく卸売業をやることが必要では。行政情報と民間情報をあわせて提供するプラットフォームが必要になる。

<ディスカッションのポイント>

【主な意見・論点】
  • 自分が持っているデータとオープンデータで提供されるデータを組み合わせて自分たち用の情報を作っていくという構造、メカニズムを考える必要がある。
  • これまで社会的課題の把握は「勘」によっていたが、それが本当に課題なのかを、オープンデータで確認ができるようになるのではないか。
  • GIS等でリアルタイムデータが表示できるようになれば、関心ある人の関心を喚起するしくみとして有効ではないか。
  • ビッグデータが注目されているが、実はロングテールのところが重要ではないか。
  • ロングテールをいかに自治体がリアルタイムに把握し地域企業と共有していくかが課題。
  • 自治体内部ではデータはリアルタイムで入ってくるが、それらをどう見せるかができていない。自治体間の比較など、見る人の立場で見せるように変えていく必要がある。
  • データそのもののオープン化は重要だが、企業・市民・公共をつなぐ情報連携のしかけをどう作るか、リアルの取組も含めて全体のアーキテクチャを考える必要がある。

討論によって、地域のオープンデータは地域社会の維持・活性化につながる重要な取組であること、データのオープン化だけでなく、産官民をつなぐしかけづくりがきわめて重要であることなどが、参加者に共通の認識となりました。